明治29年に生まれ、16歳から30歳までの大正時代に多くの作品を書き上げ、昭和8年、37歳で亡くなるまで、明治、大正、昭和の時代を生きた宮沢賢治。昭和に生まれたポランの会の創立メンバーから、平成生まれの語り手に、それぞれが生きた時代を象徴する表現方法で「宮澤賢治の童話」の一人語りを繋いてゆく。
2018年の本公演は20代~30代の語り手ならではの舞台構成で上演しました。宮沢賢治の童話の特徴でもあるキラキラした風景を封印し、「心の闇」と「鋭角な感情」、「ひかり」を表現しています。
20代、30代は宮沢賢治とトシと同じ年代です。
同年代にしかできない表現も見どころの一つです。
どんぐりと山猫
語り 渡辺萌奈
この作品には沢山の登場人物が出てきます。それはまるで仕掛け絵本のよう。手紙を受け取った一郎は、山猫に会いにいく為に山へ入って行きます。そこで出会う様々な生き物達に導かれて行くように、一郎は奥の方へ奥の方へと進んで行きます。今回の衣装は緑のシャツ・緑赤白金のキラキラしたチェックのベストに赤いズボン。全てに金色のボタンが使われていて、金のどんぐりをイメージしています。山猫から手紙は来なくなってしまったけれど、栗の木や滝、キノコもリスも今だってあの場所に居るのです。案外茶色などんぐりも考え方が変えればいつだって金色に見えるかもしれませんね。一郎と一緒にわくわくキラキラドキドキして、そしてちょっぴり昔を思い出してみて下さい。
蜘蛛となめくぢと狸
語り 鈴木太二
この童話は賢治さんが22歳の時に、弟や妹の前で朗読した作品です。商業資本家の蜘蛛。親切を装ったなめくぢ。インチキ宗教家の狸。立派になろうと毎日を必死に生きる3人が自滅的な最期を迎えていく、まさしく「地獄行きのマラソン競走」がユーモラスに描かれています。
欲は人生を豊かにしますが、反面満足するということは中々無く、時に美点とも欠点とも取られるもの。その欲にどう絡め取られ、どう変わっていくのか。
欲望ある限り、何かが変わり、生まれる
今日という日を明日にする事さえ、欲望だ。
ひのきとひなげし
語り 美沙
スターになりたいと願い、誰かを羨んでばかりいるひなげし。彼女達は優しいひのきの言葉にも反発して、まともに話を聞こうとしません。
そんなひなげし達をを騙しにきた悪魔が、蛙や医者に化けて登場します。美容術を施してくれるという悪魔の言葉には、素直に耳を傾けるひなげし達。ですが、ありのままで生きる事の大切さを語るひのきの言葉は理解する事が出来ません。
ひのきとひなげしの噛み合わない会話は滑稽でありながら、どこか物悲しさを感じさせます。
せっかくこの世に生まれたなら美しくなりたい、スターになりたい。
欲望に溢れたステージで!